韓国における2019年知的財産権の動向について簡略に申し上げます。
1.韓国における知識財産権出願及び登録動向
韓国特許庁が発表した資料によれば、2019年1月から11月まで累積された全体の出願及び登録件数は昨年の同期(2018年01月から2018年11月まで)と対比して各々約6.3%、6.9%ずつ増加したのに対し、審判請求件数は約11.2%減少したことが分かりました。
2019年1月‐11月 |
累積出願件数 |
累積登録件数 |
審判請求件数 |
特許 |
193,170 (4.1%増加) |
114,993 (5.4%増加) |
3,631 |
実用新案 |
4,893 (12.0%減少) |
2,218 (10.9%減少) |
149 |
デザイン |
58,613 (2.5%増加) |
47,868 (5.5%増加) |
380 |
商標 |
202,152 (10.2%増加) |
115,383 (9.5%増加) |
4,122 |
計 |
458,828 (6.3%増加) |
280,462 (6.9%増加) |
8,282 (11.2%減少) |
現時点では12月を含む2019年の統計は発表されていませんが、この傾向が続く見込みであり、2018年も実用新案の出願及び登録件数が減少したのに対し、特許、デザイン及び商標部門で出願件数が増加したことから、このような知的財産権の傾向は翌年も維持するものと見られます。
2.on-demand型ヘルスケア分野の特許出願動向
・ 特許出願の動向全般
高齢化、気候変化及び新たな経済成長動力確保の必要性に伴い、医療分野では特許権確保の競争がかつてなく熾烈になり、中国、米国、日本、英国などの国家は既に数年前からon-demand型ヘルスケア分野に対する積極的な投資が行われています。
on-demand型ヘルスケア分野は大きくは「医療診断シミュレーションまたはデータマイニング」、「医療映像の取扱及び処理」、「患者医療保健データの取扱及び処理」、「治療法または健康増進計画」、「医療陣と患者とのコミュニケーション手段」、「医療報告書の作成及び送信」、「医学的資料の取扱及び処理」、「医療施設及び装備の管理・運営」、並びに「AIシステムを活用した医療用アプリケーション」に区別され、直・間接的に医療行為を遂行又は補助するという点でその他のバイオ分野とは対比されます。
韓国の場合、バイオ分野は2018年の1年間、医薬4,967件、バイオ技術4,723件等の国内出願となり、どの分野よりもいち早く膨脹し、その中でも製薬と医療装備等に関する特許が主なものとなっています。医療行為に関する特許を認めていない現行の特許法の下では現在も直接的な医療サービスよりは製薬及び医療装備に特許出願が集中していることが確認できます。
しかし、韓国政府は2017年、ビッグデータ及び人工知能を活用した精密医療及び新概念医療機器の開発を13大国家革新成長動力の一つに選定し、2022年までの研究開発及び実証事業に対するロードマップを提示しており、人工知能、ビッグデータ、医療用ロボット、遺伝体技術等の第4次産業革命と結合した医療技術であるon-demand型ヘルスケアに対する特許権の確保が可能となるにつれ、該当分野に対する研究開発が本格化するものと見られます。
2008年から2018年までのon-demand型ヘルスケアに係る出願は、IP5特許庁では計41,868件に達するのに対し、韓国では1,028件とIP5全体の2.5%にとどまるなど、on-demand型ヘルスケア分野の後発走者と評価されていますが、年平均の出願増加率は38.7%であり、年平均15.3%ずつ成長したIP5の増加率と比較しても、増加率のみからすればどの国より速いスピードで活性化していることが分かります。
・ 出願動向の分析
韓国知識財産研究院が2019年11月22日に発表した「韓国におけるon-demand型ヘルスケア分野の特許技術現況及び示唆」によれば、on-demand型ヘルスケア分野を細部的に検討すると、IP5特許庁を基準に計41,868件の出願特許の中で「医療診断、シミュレーション又はデータマイニング」分野が15,748件であって37.6%を占め、最も高い出願比重を占めているものと表れ、続いて、「患者医療保健データの取扱及び処理(10,020件、23.9%)」、「医療施設及び装備の管理並びに運営(5,937件、14.2%)」、「治療法又は健康増進計画(4,943件、11.8%)」、「医療映像の取扱及び処理(2,142件、5.1%)」、「医療報告書の生成及び電送(2,030件、4.8%)」、「医療陣と患者とのコミュニケーション手段(745件,1.8%)」、「医学的資料の取扱及び処理(282件、0.7%)」、及び、「AIシステムを活用した医療用アプリケーション(21件、0.1%)」の順で特許出願が行われているものと分かりました。
IP5のうち、海外出願人が韓国に進入した比率は1%以内と非常に低く、韓国特許の79.2%が韓国の出願人によるものであると分かり、韓国の特許の中でも機関出願人は全出願の31%にとどまり、特に企業よりは大学や公共機関の出願比重(17.7%)が高く現れました。